2011年06月04日

『就眠儀式』感想:★★★☆☆

就眠儀式 新装版
就眠儀式 新装版須永 朝彦

名著刊行会 1992-02
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 『血のアラベスク―吸血鬼読本』に於いて、スラブ圏で信じられていた一種の民話としての吸血鬼から、フィクションとしての吸血鬼までをバランス良く解説してくれた須永朝彦氏の手による吸血鬼本。私が買ったのは名著刊行会(凄い名前だ)の新装版。
 収録されているのは氏の短編と超短編11作に、吸血鬼小説の歴史解説1編。以下収録作一覧。全て旧字旧仮名。


ぬばたまの
樅の木の下で
R公の織畫
就眠儀式
神聖羅馬帝國
森の彼方の地
蝙蝠男
薔薇色の月
三題噺擬維納風贋畫集
ガリヴァの知られざる旅

紅くて然も暗い憧憬 

 吸血鬼本を一覧にした「吸血鬼圖書室」も収録。だがこれは、同じ氏の手によるペヨトル工房から再版された『血のアラベスク』収録の同名「吸血鬼図書室」の方が新しくて(と言っても1993年、本書は1991年)良いかも。
 「樅の木の下で」は、新字新仮名で書物の王国シリーズの『吸血鬼』にも収録されている。

 以下、長いので折りたたみ。
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posted by 春色 at 23:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月31日

先月の読書まとめ(2011/04)

ピンクピンク
 危うくまとめるの忘れるところだったわ……。
 まだ4月分だと言うのに、危なすぎる。

 ギリギリで先月の読書まとめ。
 と言っても、ちょっとビックリするほどに読んでないけど。


・読んだ本一覧

ヴェルサイユ宮殿に暮らす—優雅で悲惨な宮廷生活ヴェルサイユ宮殿に暮らす- 優雅で悲惨な宮廷生活読書メーター
光が眩ければ眩いほどに、影もまた深い。とか何とか言えばカッコいいが、ルイ14世が建てた豪華な館は豪華すぎて、快適性を犠牲にしていた。己の威信を示すためのハリボテが、いつしかハリボテそれ自体に価値が見出されるようになり、それを維持するために多額の費用が費やされるようになる。手段と目的が入れ替わる悲劇で喜劇。マリーアントワネットの肌着の件なんてギャグにしか思えないが、これを真面目にやってるんだから、いやいや大変ですね。/あまりに盛大な誤字と表記揺れは、もう笑っとけ。
(読了日:04月12日 著者:ウィリアム・リッチー・ニュートン、翻訳:北浦春香


ラブ・ケミストリーラブ・ケミストリー読書メーターもっと感想(★★☆☆☆)
いつミステリーに化けるんだろうと思っていたら、ライトノベルに化けた。キャラクターそれぞれがあまりに典型的な上に、作者の彼らの扱いが軽すぎる。「私」の正体は想定内だったが、オチは予想以上なご都合のよろしさで、もうどーでも良いや、うん。/とは言え、有機の合成系学生の日常部分は素直に面白い。「ですよねー」なんて頷きながら読んだけれど、このマイナーすぎるネタは果たしてどこまで読者に理解されるのか。しかし、いくらフィクションとは言え、主人公の実験が成功しすぎて嫉妬。
(読了日:04月06日 著者:喜多喜久


2011年04月・まとめ
読んだ本の数:2冊
読んだページ数:448ページ


 2冊しか読んでないけれど、どちらもショックな2冊でした。

 『ヴェルサイユ宮殿に暮らす- 優雅で悲惨な宮廷生活』には「校正さん、仕事しろ!」と叫ばせて頂きました。
 微妙に時代を行ったり来たりするのが分かりにくい、って文句は原作者に言うべきだが、しかし、表記揺れや誤字脱字は擁護出来ないっすよ、白水社さん……。
 ここまで「がっかり」させられたってことは、逆に言うと、どうやら私は白水社という出版社をかなり信頼していたらしい。
 にしても、何でそんなに信頼していたんだろう。今まで読んだ中で最も「良く出したな! ニッチすぎるわ!!」と驚愕した『ある子殺しの女の記録―18世紀ドイツの裁判記録から』は白水……じゃなくて、人文書院だし。お気に入りの『現代東欧幻想小説』が白水社だからか?
 自分でも良く分からないや。確か何かしら理由があったと思うんだけどなぁ。「あの○○を出してくれた白水社が……」と読みながらじりじり凹んでいった記憶があるんだけど、何だっけか。
 あ、ちなみに、内容自体は中々に興味深いと思います。太陽王以下の皆様の「普通の生活」をちょこっと覗く感じで、面白い。
 けれど、あの時代にロマン感じている人が読むと、夢が壊れるかもしれない。

 『ラブ・ケミストリー』は『ラブ・ケミストリー』で、作者が終盤で見せてくれたキャラクターのぶん投げっぷりに驚愕した。
 キャラクターを大事にしすぎてご都合主義乙になる展開は何度か見てきたが、展開のためにキャラぶん投げるのには初めて遭遇した。
 自分の作ったキャラクターなんだから、もうちょっと大事にしてあげようよ……。


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2011年05月26日

『ラブ・ケミストリー』感想:★★☆☆☆

ラブ・ケミストリー
ラブ・ケミストリー喜多 喜久

宝島社 2011-03-04
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 第9回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞作。
 とは言え、ミステリー成分は皆無。少なくとも私には嗅ぎ取れず。
 ミステリーだと思って読んだせいで、肩透かし喰らわされた気分。これはジャンル的にはラブコメディーに分類されるんじゃないのかな。それも「ラブコメだから何でもありですよ!」くらいのノリで読まないと駄目なレベル。
 ま、そのノリで読むには値段が高いけれども……。


 一人称で展開される本書の語り手は二人。
 片方は「僕」。主人公でもある東京大学の院生・藤村桂一郎。絵に描いたような化学馬鹿。しかし単に化学に憑かれただけの馬鹿ではない。彼はなんと、物質の構造式を見るだけでその合成経路を閃くことが出来るという、超絶能力の持ち主なのだ。例え対象が複雑怪奇でドデカイ構造を持とうとも、藤村の能力を阻害は出来ない。どんな構造式であろうとも、それを一目見れば彼の脳内には合成経路が浮かび上がってくるのだ。合成系じゃない人には分かりにくいことこの上ない彼の能力だが、それは紛れもなく神が与えたたもうた奇跡。
 ……ここで思わず、一応は合成系だった私は「ねーよw」と草生やしながら裏手で突っ込み入れてしまいましたよ。なんだそれ。どんなチートだよ。フィクションだと分かっていても、それでも羨ましい通り越してムカつくわー。
 ああ、ご心配なく、作者の懇切丁寧な説明がなされているので、誰が読んでも「意味がサッパリ分かりません」状態にはならないことは保障します。
 この彼の「素晴らしいにも程度があるっつーの」な能力を持ってすれば、今まで誰にも合成出来なかった天然物の合成経路を発見し放題で、論文も書き放題。論文の数は科学者の能力を示す指数なのだから、つまり、科学者としての彼の未来はどこまでも輝いていたのです。そう、その運命の日までは。
 その日、指導教官の雇った美人秘書を紹介された彼は、一瞬にして一方的な恋に落ちる。そしてその瞬間から、彼の能力は失われてしまったのだった。

 語り手のもう片方は「私」。彼女が語り手となるのは各章に挿入された短いダイアローグだけ。
 彼女は死を間近に控えた身であった。その惨い運命を告げるために現われたのは、カロンと名乗る黒服の美女。カロンは、死者がこの世に強いを残すことのないように、死の迫った人間の望みを叶えてやるのが仕事だと言う。
 「私」の願いはだた一つ。奇跡の能力を藤村に取り戻させてあげたい。
 その願いを聞いたカロンは意味深長に微笑みながらも、彼女の望みを叶えるべく、彼に近づくのであった。


 ってのがあらすじ。あらすじって割には長かったけど。
 長いついでに以下は折りたたみ。
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posted by 春色 at 22:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月20日

『サラゴサ手稿』感想:★★★★★

世界幻想文学大系〈第19巻〉サラゴサ手稿 (1980年)
世界幻想文学大系〈第19巻〉サラゴサ手稿 (1980年)荒俣 宏 紀田 順一郎 J.ポトツキ

国書刊行会 1980-09
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 翻訳者は工藤幸雄。
 「好きだー! 結婚してくれー!!」とか何とか意味不明なことを絶叫したいほどに面白かったです、真面目に。君に出会えて良かった、ってのは誰の歌の歌詞だっけか。
 ただ、「何がどう面白いのよ?」と聞かれると答えに困るのも事実。うーん、何が面白いのかなコレ。一言ではなんとも説明しにくいなぁ。


 『サラゴサ手稿』はポーランドの大貴族ポトツキの作品。
 最初の序の書き手はかつてのフランス軍士官。彼がサラゴサ包囲に参加した際に、イスパニア語で書かれた手稿を発見する。イスパニア語に堪能ではない彼ではあったが、それでもその手稿の素晴らしさは分かった。後に彼は手稿の正当な持ち主から許可を得て、それをフランス語に翻訳することに成功する。以下に記すのはその翻訳後の文章である。
 と、そんな前振りから始まるのが全六十六日分の手稿。ただこの国書刊行会から出ている『サラゴサ手稿』は十四日分だけ。生殺し感が半端無いでごさいます。

 無駄に長くなるので、ここで一旦折りたたみ。

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2011年05月09日

『東欧怪談集』感想:★★★★★

東欧怪談集 (河出文庫)
東欧怪談集 (河出文庫)沼野 充義

河出書房新社 1995-01
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 読み終わったのはいつだよ、な感じの遅すぎる感想。
 河出の怪談集シリーズの例に漏れず、本書もまた怪談と言うよりも幻想小説の傾向が強い。
 ちなみに、「東欧」とはなんぞや? との問いに関しては、本書の編集をした沼野充義氏はあとがきで以下のように述べている。
僕にとってこの「東欧」とは、単なる地理的な概念でもなければ、政治的な色分けでもない。それはしいて言えば、文学的想像力のあり方に関わることなのだ。アジアに向き合ったときはヨーロッパ的な文化の強力な擁護者として立ち現れるものの、西欧に対してはどうしても「田舎くさい」非ヨーロッパ的な闖入者のように見えてしまい、西方的な洗練された形式と、東方的などろどろした混沌のあわいに、捉えどころのない姿を変幻自在に見せては、また深い裂け目の中に消えていく幻影のようなもの。(p.423)

 ヨーロッパを美化しすぎじゃないですか、と思わないでもないが、つまりは西欧とアジアの狭間ってところですかね。
 そんな訳で、ロシアからも1作品が収録されております。
 
 収録されているのは以下26作品。

・ポーランド
「『サラゴサ手稿』第五十三日 トラルバの騎士分団長の物語」 ヤン・ポトツキ 工藤幸雄・訳
「不思議通り」 フランチシェク・ミランドラ 長谷見一雄・訳
「シャモタ氏の恋人」 ステファン・グラビンスキ 沼野充義・訳
「笑うでぶ」 スワヴォーミル・ムロージェック 沼野充義・訳
「こぶ」 レシェク・コワコフスキ 沼野充義・訳 芝田文乃・訳
「蠅」 ヨネカワ・カズミ 坂倉千鶴・訳
・チェコ
「吸血鬼」 ヤン・ネルダ 石川達夫・訳
「ファウストの館」 アロイス・イラーセク 石川達夫・訳
「足あと」 カレル・チャペック 栗栖継・訳
「不吉なマドンナ」 イジー・カラーセク・ゼ・ルヴォヴィツ 石川達夫・訳
「生まれそこなった命」 エダ・クリセオヴァー 石川達夫・訳
・スロヴァキア
「出会い」 フランチシェク・シヴァントネル 長與進・訳
「静寂」 ヤーン・レンチョ 長與進・訳
「この世の終わり」 ヨゼフ・プシカーシ 木村英明・訳
・ハンガリー
「ドーディ」 カリンティ・フリジェシュ 岩崎悦子・訳
「蛙」 チャート・ゲーザ 岩崎悦子・訳
「骨と骨髄」 タマーシ・アーロン 岩崎悦子・訳
・ユダヤ
「ゴーレム伝説」 イツホク・レイブシュ・ペレツ 西成彦・訳
「バビロンの男」 イツホク・バシヴィス(アイザック・シンガー) 西成彦・訳
・セルビア
「象牙の女」 イヴォ・アンドリッチ 栗原成郎・訳
「『ハザール事典』 ルカレヴィチ、エフロシニア」 ミロラド・パヴィチ 工藤幸雄・訳
「見知らぬ人の鏡 『死者の百科事典』より」 ダニロ・キシェュ 栗原成郎・訳
・マケドニア
「吸血鬼」 ペトレ・M・アンドレエフスキ 中島由美・訳
・ルーマニア
「一万二千頭の牛」 ミルチャア・エリアーデ 直野敦・訳
「夢」 ジブ・I・ミハエスク 住谷春也・訳
・ロシア
「東スラヴ人の歌」 リュドミラ・ペトルシェフスカヤ 沼野恭子・訳

 目次では国別に書いてあるが、本文では「この作品からマケドニア」と言った記載は全くない。
 ポーランドの作品多いなーと思っていたら、気が付いたらチェコの後半にさしかかっていてビックリした記憶が。
 まぁ、作品の頭に載せられている著者略歴から気が付けって話ですが。

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タグ:河出文庫 河出書房新社 ヤン・ポトツキ 河出怪談集シリーズ Jan Potocki 工藤 幸雄 フランチシェク・ミランドラ Franciszek Mirandola 長谷見 一雄 ステファン・グラビンスキ Stefan Grabinski 沼野 充義 スワヴォミル・ムロージェク Slawomir Mrozek レシェク・コワコフスキ Leszek Kołakowsk 芝田 文乃 ヨネカワ・カズミ Kazumi Yonekawa 星5つ(★★★★★) 坂倉 千鶴 ヤン・ネルダ Jan Nepomuk Neruda 石川 達夫 アロイス・イラーセク Alois Jirásek カレル・チャペック Karel Capek 栗栖 継 イジー・カラーセク・ゼ・ルヴォヴィツ Jiji Karasek ze Lvovi エダ・クリセオヴァー Eda Kriseova 長與 進 フランチシェク・シヴァントネル Franticek Cvantner ヤーン・レンチョ Jan Lenco ヨゼフ・プシカーシ Jozef Pusikasi 木村 英明 カリンティ・フリジェシュ Karinthy Frigyes 岩崎 悦子 チャート・ゲーザ Csáth Géza タマーシ・アーロン Aron Tamasi イツホク・レイブシュ・ペレツ Icchok Lejbusz Perec 西 成彦 イツホク・バシヴィス Itskhok Bashevis アイザック・バシェヴィス・シンガー Isaac Bashevis Singer イヴォ・アンドリッチ Ivo Andrić 栗原 成郎 ミロラド・パヴィチ Milorad Pavić ダニロ・キシュ Danilo Kiš ペトレ・M・アンドレエフスキ Petre M Andreevski 中島 由美 ミルチャ・エリアーデ Mircea Eliade 直野 敦 ジブ・I・ミハエスク Gib I Mihiescu 住谷 春也 リュドミラ・ペトルシェフスカヤ Liudmila Petrushevskaia 沼野 恭子
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2011年04月30日

先月の読書まとめ(2011/03)


お手々揃えて

 歩きすぎたのか、足の裏が痛いです。そしてそれよりも重症なことに、頭がボーッとします。これはやはり花粉症かな……。
 凹みながら先月の読書まとめ。


・読んだ本一覧

解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯読書メーター
実験を繰り返し成功も失敗もその原因を考察せよ、と言うのは現代科学の基本事項ではあるが、現代それも宗教から比較的自由な日本でおいてすら、実はなかなか難しい。思い込みはいつだって強烈だ。現代とは比べ物にならないほどに、中世からの伝統と宗教観に雁字搦めにされていた十八世紀にこれほどまでに基本に忠実に思考と実験を重ねた人物がいるとは驚き。ただその実験台となるのが主に人間を含めた生き物である点が読む人を選ぶか。/凄く面白かった。その分だけ、終盤の良い所での誤訳につんのめった。
(読了日:03月04日 著者:ウェンディ・ムーア、翻訳:矢野真千子


疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)疫病と世界史 上 (中公文庫)読書メーター
いやいや、面白い。「目に見えないウイルスどもが人間の歴史を作ったんだぜ!」なんて大きすぎる視点を打ち立てた作者に、まずは拍手を。そんなデカイ説を支えるにしては、証拠が不十分なのも折り込み済みの姿勢が潔くて好きだ。細かい部分はさて置いて、大きな部分では作者の主張は正しいように思えるが、さて現実は? 下巻では歴史も下って、もうちょっと検証しやすくなるかな。
(読了日:03月06日 著者:ウィリアム・H・マクニール、翻訳:佐々木昭夫


疫病と世界史 下 (中公文庫 マ 10-2)疫病と世界史 下 (中公文庫)読書メーター
上巻から時代が下り、馴染みのある単語が増えて来た下巻。人間の移動が広域に及ぶようになるにつれて、人間に寄生する病気も長距離を移動するようになる。それがもたらした明暗は時に劇的であり、インディオ文化の壊滅がその一例である。と言うのが、作者の主張。「作者が今から二千年くらい後に生まれていれば、証拠の面でどうにかなったかもね」と思わせてくれるほどに、何とも限界を感じる本。でも作者のブチ上げた仮説はかなり好きですよ。
(読了日:03月07日 著者:ウィリアム・H・マクニール、翻訳:佐々木昭夫


ある子殺しの女の記録―18世紀ドイツの裁判記録からある子殺しの女の記録―18世紀ドイツの裁判記録から読書メーター
望まぬ妊娠出産の果てに生まれたばかりの我が子を殺した女が裁かれ、死刑宣告を受け、そして実際に処刑されるまでの裁判記録を訳した書。書類だから当然とは言え、とんでもなく淡々と綴られている。本書の「子殺し女」はゲーテの『ファウスト』に登場するグレートヒェンのモデルとなったらしい。その手の話を翻訳者が訳者注で延々と教えてくださる。とりあえず、翻訳者の方がファウスト好きなことだけはよく分かった。
(読了日:03月08日 著者:S・ビルクナー、翻訳:佐藤正樹


図説 ヨーロッパ服飾史 (ふくろうの本/世界の歴史)図説 ヨーロッパ服飾史 (ふくろうの本/世界の歴史)読書メーター
カラフルな写真も多く収録された、眺めるだけでも楽しい一冊。中身はタイトルそのまんま。/後半の第三章(異国趣味とレトロ趣味)と第四章(ジェンダー、下着、子ども服)は今まで読んだことのない視点だったので、とても面白かった。
(読了日:03月10日 著者:徳井淑子


楽園・味覚・理性―嗜好品の歴史楽園・味覚・理性―嗜好品の歴史読書メーター
生物として生きていく上で必要はないけれど、人間として暮らす為には必須である嗜好品についての歴史。と言っても、対象は西欧のみ。コーヒーやチョコレート、タバコ、紅茶、火酒、コカインがもたらした西欧への影響についてが描かれている。各国の差が面白いところ。薄い本であるが、当時の風刺画などが多く挿入されていることもあって、読む部分はさらに少ない。/私はホットチョコレート派になりたいわ……。
(読了日:03月22日 著者:ヴォルフガング・シヴェルブシュ、翻訳:福本義憲


2011.04.30-1.jpg
・まとめ
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:1640ページ

 小説は一冊も読み終わらなかった一ヶ月でした。
 ヴォルフガング・シヴェルブシュは他にも面白そうな本を書いているので、また機会があったら読みたいな。
 しかし覚えられる気のしない名前だなぁ……。


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TREview
posted by 春色 at 23:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月31日

先月の読書まとめ(2011/02)


2011.03.31-2.jpg
 久しぶりに更新。久しぶりでもやっぱり重たいseesaaに感動すら覚えた。

 例によって駆け込みで先月の読書まとめ。
 2月が28日までしかないとは言え、まとめるほど読んでないって現実には気が付かない方向で。


・読んだ本一覧

東欧怪談集 (河出文庫)東欧怪談集 (河出文庫)読書メーターもっと感想(★★★★★)
ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリー、ユダヤ、セルビア、マケドニア、ルーマニア、ロシアの作者の作品26編を収録。怪談と銘打たれているが、だいぶ幻想小説寄り。個人的には「『サラゴサ手稿』第五十三日」、「不思議通り」、「シャモタ氏の恋人」、「ファウストの館」、「足あと」、「不吉なマドンナ」、「生まれそこなった命」、「出会い」、「象牙の女」、「見知らぬ人の鏡」、「夢」、「東スラブ人の歌」と、つまりほぼ全ての作品がとても好き。これは素晴らしい当たりを引いた。
(読了日:02月06日 編集:沼野充義


ふらんす怪談 (河出文庫)ふらんす怪談 (河出文庫)読書メーター
「自転車の怪」「死亡統計学者」の二作は怪談だが、他の五作は世にも奇妙な物語風味。/最近は怪談と名が付けられつつも、幻想小説寄りの作品にばかり当たってたので、怪談らしいものが収録されていたのが意外だった。
(読了日:02月11日 著者:アンリ・トロワイヤ、翻訳:渋澤龍彦



2011年2月の読書メーター
・まとめ
読んだ本の数:2冊
読んだページ数:646ページ

 2冊しか読んでないのも、なかなか酷い。けれども、何度も書いているけれど『東欧怪談集 (河出文庫)』が面白かったのと、まだ1月に読んだ『女の皮膚の下―十八世紀のある医師とその患者たち』から立ち直っていないのもあって、個人的には結構満足。
 毎月ちまちま読んでいた「書物の王国」は最近すっかり放置気味。四月からはまた読もうかな。一応1冊はストックがあるんだけど。
 あと、Amazonにまた新機能が加わったんですねぇ。「いいね」ボタンなるものが増えている。これでサイトが重たくならなきゃ良いけど。


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posted by 春色 at 23:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月28日

先月の読書まとめ(2011/01)

猫氏

 駆け込みで先月のまとめ。あまりに駆け込みすぎて、いつもの緑色のグラフを落とし忘れた。

・読んだ本一覧

グランド・ツアー―良き時代の良き旅 (1983年) (中公新書)グランド・ツアー―良き時代の良き旅 (中公新書)読書メーター
十八世紀の島国イギリスの貴族階級には、国際的な教養を身につけさせるために、修行として大陸に息子を送り出す習わしがあった。それがグランド・ツアー。行き先はフランス、イタリア。時代が十八世紀ならば、それは文字通り一世一代の大旅行。若い貴族の息子と、お目付役の家庭教師が行った大旅行に一緒に同伴させて貰っている気分になれる一冊。語り口も伸びやかで、気持ちよく読める。本書が現在の日本人に突きつけている内容を噛みしめれば苦くもあるのだが。
(読了日:01月06日 著者:本城靖久


芸術家 (書物の王国)芸術家 (書物の王国)読書メーター
実在した芸術家をテーマに33編収録。実在しているだけあって、テーマとなっている人間のことを知らないと面白みが激減する。後半の日本の芸術家絡みの作品は身近で理解しやすかったが、前半の西欧方面はサッパリなのでサッパリ。
(読了日:01月16日 編集:須永朝彦


女の皮膚の下―十八世紀のある医師とその患者たち女の皮膚の下―十八世紀のある医師とその患者たち読書メーター
私たちは己が有している身体感覚は普遍的であり、古来から変わらないと思い込んでいるが、それは違う。現在の皮膚は「私」を危険な外部から遮断する壁である。対して、十八世紀に於いては皮膚は壁ではなく通路であった。体の奥底から生まれる醜い物を外に押し出すための経路であった。作者は私たちの身体観がいかに歴史の刻印を受けているか、そして同じ体を有しながらも、違う刻印の下に置かれた十八世紀の女性の、またそれを診る医者の持っていた観念を解きほぐしていく。その過程はとてもスリリングで、そして容赦なく読み手の常識を揺るがす。
(読了日:01月25日 著者:バーバラ・ドゥーデン、翻訳:井上茂子


近世イギリスのやぶ医者の社会史―一つのヨーロッパ流氓譚 (明治大学人文科学研究所叢書)近世イギリスのやぶ医者の社会史―一つのヨーロッパ流氓譚読書メーター
イギリスの近世を生きた非正規な医者たちがテーマ。作者が翻訳者だからか、当時のイギリスのならず者たちが使っていた用語に詳しい。が、作者の立ち位置がいまいち分からない。現在の常識を定規として、過去を見るのはフェアじゃない。
(読了日:01月30日 著者:岡崎康一



・まとめ
 読んだ本の数:4冊
 読んだページ数:1053ページ

 いつもこの位置にある緑色のグラフがないと変な感じ。まぁいいや。
 先月はとても充実した読書月間でした。
 新年早々『グランド・ツアー―良き時代の良き旅 (中公新書)』の楽しい語り口にウキウキし、『女の皮膚の下―十八世紀のある医師とその患者たち』で打ちのめされて、アイデンティティの崩壊に涙しました。
 この2冊、特に後者の衝撃が大きすぎて、しばらくの間読書不能状態に陥ったりもしましたけれど、まぁ読書ってのは己との対話とも言いますし、たまには芋虫よろしく地面をのたうってみるのも良いんじゃないかと思います。
 ちなみにまだ、完全に立ち直れていなかったりもします。もっと正確に言えば、消化不良で胃にもたれてるって感じでしょうか。ちゃんと消化し終わるには年単位の時間が必要な気もする。
 こんな消化に手間取る本と出会えるなんて、あー、幸せ。


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